Green Buildings

GHG(Greenhouse Gas)の排出、エネルギー・水の利用に私たちが一番関わっているとしたら、生活の中のどの部分でしょうか?


普段から生活の拠点として生活している「家」こそが、私たちが生活する上で環境に最も影響を与えている可能性があります。


国立環境研究所によると、日本国内で排出されるCO2量のうち家庭部門から発生するCO2の量は2019年度で15.4%となっており、省エネ住宅の普及が推進されています。


住宅を選ぶ際に、利便性や健康面への配慮など、各々が様々な基準を持っていると思いますが、環境や社会への影響という点で住居を内覧し、選択することはどれほどあるでしょうか?

また、そもそも私たちが選ぶことができるグリーンビルディングは、現状、日本にどれほどあるのでしょうか?


本記事では、グリーンビルディングの定義、住居形態の歴史、グリーンビルディングの良い事例、日本での現状などについて書いていきます。



”Green Buildings”とは?

「サステナブルビルディング」ではなく、「グリーンビルディング」と言うには訳があります。


サステナブルな建築であれば、使った全ての材料が自然に戻るだけでなく、何かの形で自然を再生する必要があります。

しかし、現状の建築はそのようになっていないため、パーフォーマンスに重きを置いた「グリーンビルディング」が、サステナビリティに貢献する建造物として利用される主流の言葉となっています。


住居は、暖房・冷房を備えた空調システム、日光・風を通す窓、寒さや暑さから守る外壁などの基礎的な機能から、人間と自然との繋がりを考慮する建築デザインの美しさまで、あらゆる面から最適な選択が成されています。

グリーンビルディングは、上記のような現状の建築の内、エネルギーの使用、GHGの排出、水の利用などのパフォーマンスを考慮し、その住居の周辺から利用できる資源を利用した現地の「生きる家」のような存在になることを目指します。


グリーンビルディングは、環境に良いだけでなく、私たち住居人にとっても良い効果をもたらします。

世界中の職場におけるバイオフィリックデザインの効果」によれば、自然と繋がっている時の方が、人間の生産性が約15%向上(p.25)、さらに創造性が15%向上する(p.30)という研究結果が報告されています。

太陽が遮られ、窓が閉ざされた空間での作業よりも、日光や風を浴びながら作業をする方が、何倍も人間の生活を豊かにします。


このように、環境にも、人間にも最良な建物こそが、「グリーンビルディング」です。

住居だけでなく、オフィスや工場でも同様のことが言えます。



建築の歴史

元来、住居スタイルは地域に応じたものでした。


雨が降らない熱い気候を持つ熱帯地域であれば、明るい色の厚い壁とできる限り少ない窓を持つ家が、日中の温度上昇を防止し、涼しい風による夜間の冷却を可能とします。

また、比較的過ごしやすい夏と極寒の冬を過ごさなければならない地域では、冬の冷たい風を防ぎ、多くの太陽光を受け、熱を蓄積できる設備が必要となります。


先人たちは、上記のような地域ごとの気候の特徴をよく理解し、地域にフィットした住居スタイルを持っていました。


しかし、産業革命で工業化が始まり都市に人が集まるようになると、住居は機械的となり、当時の長時間労働や集積して働く労働環境のニーズを満たすだけの住居が作られました。

20世紀の半ばには、エアコンが当たり前となり、窓は閉ざされ、太陽や日陰の重要性は減少し、現代の建物はますます外の環境と隔たれる形となりました。


技術の発展により、現代の建物は同じような形態、方法でどのような場所にも建てることができるようになりました。

化石燃料のエネルギー、機械的な暖房・冷房設備、解放されないガラスの窓などが現代の建物の特徴で、地域に適したデザインの多様性は失われたように見えます。



Green Buildingsの実例

上記でご紹介した「グリーンビルディング」の定義を元に、実際にグリーン建築が用いられた建造物をご紹介します。

グリーン建築の実装は、プロジェクト型で複数のパートナーが協力しながら実施されることが多いです。


UN City Copenhagen by 3XN

デンマークの国際連合支部が集まる”UN City”の中に、各支部をまとめている星型の建物があります。

星型の建物はグリーン建築プロジェクトを手がける3XNによってデザインされており、デンマークで一番エネルギー効率が高い建物です。(支部で行われているイニシアチブも効果の一部です)

持続可能な開発目標の実現を推進するUNが、自らサステナビリティを体現する形となっています。


エネルギー効率の高さ、アクセシビリティとセキュリティを同時に実現するデザイン、支部の機能とコラボレーションを可能にする星型の形、現地の環境や文化と共存していることなどから、現代都市の建物がサステナビリティを実現する良い例と考えられています。


建物のサステナビリティは、LEED認証のプラチナムによって保証されています。

UN Cityを見学したい場合には、金曜日に一般公開されています。


竹中工務店東京本店オフィス

東京にある竹中工務店本店オフィスも、2020年1月にWELL認証のゴールドランクを取得しました。

竹中工務店はオフィス建築当初から、働く人に配慮した自然との調和や生産性向上を意識した取り組みが成されており、2018年のオフィス改修を経て、国内初のWELL認証ゴールドランク取得に至りました。


グリーン建築を進めるプロジェクトの中でも、従業員の運動を促す仕組みや、こころのメンタルヘルスを保つ取り組みなどの創意工夫が見られる点と、揮発性物質の除去や空気質検査の実施などの建造物自体の改善が行われている点があり、

正に、人間が使用することも考慮された環境に良い建造物、グリーン建築の実践となっています。


さらに、本社での実践を活かして、竹中工務店では「健築®」というウェルネス建築をソリューションとして展開しています。

少子高齢化、独身世帯の増加、新たなライフスタイルの登場など、世の中の潮流に合わせた建築によって、人々の健康面を増進し、より快適で持続可能な町づくりを目指しています。


なお、WELL認証はLEED認証に比べて、健康的な環境を増進する指標に重きを置いた評価認証です。



まとめ

不動産、建設、都市開発などで建築に関わる企業はグリーン建築を積極的に取り入れ、エコロジカルな建造物を建築することで、環境や人々の健康に貢献することができます。


グリーン建築で印象的な点は、建物に使われる材料や使用されるエネルギーが環境に与える負荷が少ないだけでなく、見た目にも美しい建造物となっている点です。

一昔前には、サステナブルな建物として見た目には特に配慮されていないものが建設され、当時はそれが環境や人体に良いものであっても、人々に受け入れられるものとはなっていませんでした。


建設する土地、使用する材料、建物の設計、外見を含めたデザイン、全ての面からグリーン建築を実現していくためには、様々なステークホルダーの協力が必要不可欠です。

私たちも重要視しているパートナーシップが、グリーン建築を実現する際にも大切にされる必要がありますね。

キャスレーホールディングス株式会社

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