オンラインセミナー開催報告【Covid-19における企業対応の国際比較】

新しい伝染病として知られるCovid-19。

Covid-19の勢いは止まるところを知らず、私たちはこれまでに新しい生活様式を取り入れてきました。

筆者としても、以前のような人と普通に関われる生活が恋しく思われますが、ご自身の身を守るためにも責任ある行動を今後も続けていきましょう!


さて、今回は7月31日に日本マーケティング学会主催のオンラインセミナー「Covid-19における企業対応の国際比較」に筆者である三上が登壇させていただきましたので、その内容を要約してお届けしたいと思います。

キャスレーの代表取締役である砂川がマーケティング学会のリサーチプロジェクト「サステナブル・マーケティング研究会」にメンバーとして参画しており、今回はこのような機会をいただきました。

※「サステナブル・マーケティング研究会」の詳細につきましては、記事の最後に掲載しているリンクよりご参照ください


開催から少し日が経ってしまいましたが、コロナへの対応に迫られる各企業にとっても参考になる内容ではないかと思います。


オンラインセミナー開催内容

オンラインセミナーは三部構成で、第一部のテーマが「ESG投資×マーケティング」、第二部のテーマが「Covid-19における企業対応の国際比較」、第三部のテーマが第二部の内容に基づいた「パネルディスカッション」でした。


第一部

私は第一部を担当し、ESGの観点からみたマーケティングの重要性について論じさせていただきました。

全体像として、サステナビリティ経営の特徴やSDGsなどの共通アジェンダを取り入れていく際の基本姿勢を理解した上で、サステナビリティに取り組む企業の行動をステークホルダーに適切に理解してもらうためにマーケティングの力が必要になってくるということをお伝えしました。

また、お話の中で、私たちキャスレーとして考えている「企業行動の動機」の評価への影響についても説明しました。

我々の考えでは、”ESGにおけるCo2の排出削減量や女性役員の比率などの数字はあくまで「結果」であり、その導出過程である企業の「行動」、その行動の源泉となる「動機」の3つの軸での総合評価”が重要と考えています。

現在のESG評価の手法は、主に「結果」のみを利用して企業のESGパフォーマンスを測定することが主流ですが、ESG活動の「行動」そのものや、その背景である「動機」、つまりパーパスの部分も溶けたような評価手法や指標が今後サステナブル投資で利用されるのではないか、という内容です。

現在は、マーケティングやコミュニケーションが上手な企業は悪しき部分が隠蔽され、後に明るみとなって社会的な大問題に発展することもあるので、社会に良い行動を行っている=善良な企業だとは言い切れないということをお話しました。


第二部

続いて、駒澤大学教授の青木茂樹氏より発表が行われました。

Covid-19に対する企業の対応を、マーケティング(動画やSNSの利用)、対応スピード、対応の規模感、対象の違いなどから考察した内容でした。

動画の例として挙げられたP&Gの動画では、企業としてCovid-19に対する取り組み姿勢を分かりやすく印象に残る形で伝えられていました。

また、対応スピードでは一律に早い遅いの判断はできないが日本が少し遅れていたこと、対策規模では海外企業は使用する金額の規模が大きく開示されていること、海外はケアの対象範囲が広く、特にサプライヤーへの対応が重視されていたこと、などが主な結果として報告されていました。

世界が今後Covid-19でサステナビリティの方に進んでいくと考えている人が半数以上であったというアンケート結果も公表され、Covid-19によってサステナビリティの推進にもより拍車がかかるように思われます。

青木氏は今の現状を「Doughnut Economic Model」になぞらえて説明されていました。

気候変動や生物多様性の損失が生態系の限界を超えて引き起こされ、水や食物、社会の平等といった社会の基盤がどれほど危機に瀕しているのかという現状を、図を通して読み解くことができます。

さらに、世界で活躍しているソーシャルエンタープライズの現状と今後の展開、青木氏が精力的に取り組んでいる山梨県で活動するNPOの最近の動向などについてもお話されていました。


第三部

第三部のパネルディスカッションでは、各登壇者の皆さまが独自の見解をお話されていました。

ここでは全てをお話することはできないので、筆者が聞いていて印象に残った部分に絞って書かせていただきます。

まず登壇者の皆さまが納得されていたことは、コロナの影響で消費者意識が変わっているにも関わらず、その変化に企業が対応仕切れていないという点です。

むしろ、生活様式が元に戻るという感覚を持つ企業の方が多い印象を受けているようでした。

海外企業と日本企業の国際比較の例に見るように、世界情勢や消費者意識が変わる中で迅速に対応できている企業とできていない企業には大きな差があり、コロナの収束が長引き対応が遅れるほど、その溝も大きくなるように思われます。

いつか終わり元にもどる、という感覚を持つよりは、このコロナをきっかけに企業の体制を改めて見直し、企業の体質・レジリエンスを高め、次の大きなショックに備えていくことが必要とされています。

その一つとして、サステナブルマーケティングの重要性が改めて認識されていました。


セミナーに登壇した感想

上記でご紹介したような内容でセミナーが開催されましたが、登壇させていただいた感想として、まず参加者の皆さまの積極性を感じました。

参加者数は50人程度でしたが、私のセッションの際にも質問を多くいただき、皆さまの観点も大変勉強になりました。

それぞれが実務の中で抱えている疑問や知識的な面で興味のある部分など、多様な見方をされているのだなと思いました。

そして、世界はサステナビリティを進めていく方向に今後も進んでいくであろうということです。

コロナによる健康への影響を初め、気候変動などの既存の社会的問題を含めて、企業、自治体、市民など様々なステークホルダーが当事者意識を持って共通アジェンダの改善に対する取り組みを進めていく必要があります。

各ステークホルダーに関心や目的の違いはありますが、共通アジェンダは利害関係を乗り越えた新たな形での協働関係が求められています。

日本ではこういったコラボレーションはあまり進んでいないように思いますが、少しずつ取り組みは進んでいます。

このような流れに取り残されないためにも、サステナナビリティに関する情報にはアンテナを張り、常にキャッチアップして、各企業人が経営の場で生かすことができれば良いと思います。


【参考リンク】

オンラインセミナー開催告知:https://ideasforgood.jp/2020/07/21/smri-covid19/

マーケティング学会のリサーチプロジェクト「サステナブル・マーケティング研究会」:http://www.j-mac.or.jp/research-project/17565/

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